底地に抵当権がついていたらどうなる!?借地権は消滅してしまうことはない?
不動産取引において、しばしば見落とされがちなのが「底地」に関する様々な権利関係です。特に、底地に設定される抵当権は、金融機関や国税局が関与することが多く、その影響は借地権にまで及びます。今日はこの抵当権の設定と、それが借地権に及ぼす影響について掘り下げていきましょう。
目次
まずは抵当権とは?
抵当権とは、金融機関や国税局が貸し付けた資金の返済保証として土地や建物に設定する権利のことです。つまり、借金が返せなくなった場合、その土地や建物を売って債務を返済することができるようにするためのものです。
抵当権設定の一般的な状況
一般的に、底地の購入に際して住宅ローンが利用できないため、抵当権が設定されるケースは多くありません。しかし、相続税が関係する場合、特に納税者が期限内に納付できないとき、抵当権が設定されることがあります。このため、底地を取得する際には、既存の抵当権の有無をチェックすることが不可欠です。
抵当権が設定される主なケース
金融機関による抵当権の設定は、土地の自由な活用が制限される底地において、売却価格が更地価格の10~15%にまで下落することがあります。こうした土地を相続すると、予期せぬ高額な相続税が発生し、これを支払うために不動産担保ローンを利用する際に抵当権が設定されるのです。
国税局による抵当権の設定は、高額な相続税を現金で一括で納めることが難しい場合に行われます。税金の滞納を避けるためにも、底地の権利関係を理解し、適切な対策を講じる必要があります。
抵当権と借地権の対抗関係
抵当権者と借地権者は対抗関係にあるといわれます。債務不履行が発生した場合、抵当権者は担保不動産を競売にかける権利を持ちますが、競売による売却は借地人の建物がある場合には複雑になります。借地権とは、他人の土地を借りて使う権利です。この借地権が抵当権と衝突するのは、土地の所有者が借地人以外の第三者である場合です。借地人が土地の上に建物を建てていると、土地の所有者(抵当権設定者)はその建物を取り壊して土地を売却する必要があります。これは借地人にとっては大きな問題です。
抵当権が優先されるケース
法律上、抵当権の登記が借地権より先にある場合、抵当権が優先されます。つまり、抵当権が実行されると、借地人は土地を明け渡さなければならないのです。
借地権が優先されるケース
しかし、民法の改正により、すべての抵当権者が借地権の設定に同意し、その同意の登記がある場合、借地権が優先されます。「同意の登記」があれば、抵当権が実行されても借地人は土地を明け渡す必要はありません。
抵当権実行時の借地権はどうなる
抵当権が実行されると、借地権の消滅の可能性があります。しかし、抵当権の設定よりも前に借地権の登記がされている場合、借地権が優先されることが多いです。民法第373条により、抵当権の順位は登記の前後によって決まるため、これが重要なポイントとなります。
(抵当権の順位)
民法第373条
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
(抵当権の順位の変更)
民法第374条
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2. 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
抵当権設定時の「同意の登記」とは
2004年の民法改正により、「同意の登記」が借地人の強い味方になりました。これにより、抵当権者全員の同意があれば、抵当権が実行されても借地権が消滅しないという保護がなされています。ただし、実際にはこの同意を取り付けることは容易ではないため、専門家と相談しながら進めることが推奨されます。
民法第387条
【抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力】
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
- 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
- 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
抵当権の抹消方法
抵当権を抹消するには、抵当権抹消登記を行う必要があります。これは、抵当権者(例えば、金融機関や国税局)から債務が完済された証明をもらい、法務局に登記を申請することで行われます。
抵当権抹消登記に必要な書類は以下の通りです。
必要書類を準備したのち、登記申請書を作成して法務局に提出します。
書類 | 概要 |
登記済証または登記識別情報 | 登記完了後に登記名義人に交付される書類。ローン完済後に金融機関から送付される |
弁済証書 | ローンの完済を証明する書類 |
抵当権抹消の委任状 | 金融機関が抵当権抹消に関わる登記手続きを委任することを示した書類 |
参考までに、抵当権抹消登記には以下の費用がかかります。
費用の種類 | 費用 | 概要 |
登録免許税 | 1,000円 | 登記申請時にかかる税金 |
事前調査費用 | 332〜600円 | 抵当権が設定されている不動産の登記内容を確認する費用 |
抵当権抹消確認費用 | 332〜600円 | 抵当権が抹消されているかを確認する費用 |
司法書士への報酬 | 1〜2万円 | 抵当権抹消登記手続きを司法書士に依頼する際の費用 |
底地の買取相場
抵当権が設定された底地の買取相場は、更地価格から借地権割合を引いた額に残債を差し引いた価格になります。売却相手によって価格は大きく異なりますが、不動産業者に査定を依頼することで、売却額の目安を得ることができます。
例えば、更地価格が2,700万円、借地権割合が60%、残債が700万円の底地の買取相場は次の金額を基準にされることがあります。※必ずしも、そうではありません。
底地評価額 = 2,700万円 × (100%-60%)- 700万円 = 380万円
住宅ローン利用時の注意点
借地人が住宅ローンを利用して底地上に家を建てる場合、抵当権を設定できるのは建物のみであり、土地の利用権に関しては地主の承諾が必要です。住宅ローンの利用に際しては、地主や金融機関との事前の協議が不可欠となります。
まとめ
底地に抵当権が設定されている場合、借地権の有無やその登記の順位によって、借地人の権利が大きく変動します。抵当権と借地権の関係を理解し、適切な手続きを踏むことでリスクを最小限に抑えましょう。
不動産の買取や底地の売却、借地権での売却でのご相談は、お気軽にご相談ください。